のどかな時代の

~ 横浜の古本屋で働いていた時の話~

大きな古本屋の漫画コーナーを担当していたのですが、月に一度、横浜から出発して、戸塚、藤沢、茅ヶ崎、平塚~いわゆる湘南地方へと巡ってゆくセドリの日がとても楽しみでした。社員の先輩が、S資金と称する封筒に入ったお金(幾らくらい入ってたのかなあ)をお店から預かり、僕が、ボロい軽のバンを運転して出発。まだインターネットなんて便利なモノはありませんでしたので、電話帳や、人の記憶をたよりに、海沿いの街の古本屋を一日かけて巡ってゆくのです。新書版の絶版漫画が高値でどんどん売れていた時代、中野のまんだらけで勉強した値段を参考に、海の街の本棚からどんどん漫画を抜いてゆくのです。今思えば、ずいぶんと乱暴な、態度のデカイ商売だったなあと、恥ずかしくなりますが、その当時は、そうやって棚ごと買う勢いの商いができる自分を、ちょっとした***(恥ずかしくて云えない)くらいに思っていた、ような、気がします。まあ、絶版漫画バブルにのっかっていたからできたことですし、田舎の、おじさんおばさんのお店では、売れりゃあ何でもいいってな感じでしたから。最近の市場で、その時セドっていたような漫画の束が、全く値段にならないのを見て、一体、あの騒ぎはなんだったんだろうと、あきれる思いです。様々なプチ・バブルを繰り返しながら、古本屋は何所へ転がってゆくのか?その行き先がだんだん見えにくくなっていく今日この頃、のどかな時代の古本屋を懐かしく思い出します。


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