読書と商い

 

お客様から譲っていただいた本の中から何冊か選んで、眠る前の読書用に枕元に置いておくのが古本屋の楽しみの一つです。自分の趣味とはかけ離れた、偶然に出
会ってしまった本の中から、いつもなら読まないジャンルの本を読み始めてみるのもいいものです。知らないミステリー作家のものや、斜に構えて手を出さなかったベ
ストセラー本なんかにも時には面白いものもあって、古本屋の食わず嫌いを反省したりすることもあります。寝る前に三行だけ読んで、そのまま本の山に埋もれて忘れ去られてしまうものもあります。現在、古書象々では建築書をよく取り扱いますが、独立したての頃はそうでもありませんでした。ライトやコルビュジェ
の名前くらいは知っていましたが、建築の本はどうも固いイメージがあってあまり触手が伸びなかったのです。それでも、一般の美術書やデザイン書にまじって
ちょこちょこ入ってくる雑誌やなんかを、パラパラと、暇な本屋のことですから、見ていたわけです。見ていると、自然に建築家の名前を憶えてくる。見終われ
ば、すぐに店で、安くで並べて売るのですが、そのうちに、憶えた建築家の中から売れる人と売れない人の差があることに気づく。ほほう。そうすると、売れる人の売れる理由
を、今度は少し真剣に考え始めて、簡単な建築史の流れを頭に入れ、なるほど、難しいことは判らんが、少し、値段を、いじり始め、さらに少しずつ、人に、講釈をたれ始める。憶えたことはすぐしゃべっちゃうからねーーさてさて、そうするともう、なんだか昔から建築のことを知っていたような気になって、本当は、たいして知
りゃしないんだけど、さも、知り尽くしたような顔で本を取り扱うようにななって*****あれ、こんなことはあまり書かん方がいいような気がする
な。******とにかく、お客様との出会いが読書に繋がり、その読書がやがて商売に繋がるという古本屋の、素敵な暮らし?

象々の素敵な日記より、転載。

 


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