モズブックス の紹介

文科系古書の良書・善本を主に取り扱っています。絵葉書・古地図・摺物・古典籍など江戸末~明治・大正・戦前期の資料にも力を入れております。店舗はありませんが、インターネット、合同目録、即売会など多様な販売チャンネルを展開するとともに、お客様からの買い入れや古書市場を通じて、在庫の充実に努めています。

元の糸

連投すみません。モズブックスです。

和本の綴じ直しで思い出したことをひとつ。綴じなおすときに元の糸を残すべきかどうかという話です。

戦前の趣味雑誌によく見られますが、ごく簡単に2ヶ所くらいで結び綴じだけしてあるようなのありますよね。たとえば宮武外骨の「此花」とか。こういう綴じ方をしている雑誌は、糸が切れやすく、本がバラバラになりがちです。しかし、ちょっとでも元の糸が残っていれば、それを完全に取り除くことはせずに、新しい糸で補強するだけにしておいた方が良いみたいです。というのも、こういう雑誌は号によって糸の色を変えたりして、趣向を凝らしていることがあるからです。元の糸がどういう状態だったかを知るためにも、ちょっとでも残しておいた方がいいのだと、これはお客さんに教えられました。場合によっては、下手に補修せず、「綴じ糸切れ」と記載して販売する方がいいのかもしれません。趣味的な本ほど、こういう細かい点に気をつかいますね。

和本の場合は元糸なんてほとんど残ってないと思いますので、新しい糸に交換して問題ないと考えてますが、いかがでしょうか? どなたかご教示ください。


Re: 落丁繰りは慎重に!

こんばんは。モズブックスです。

杉本梁江堂さんが前の投稿で書いておられる和本の「飛び丁」、古典籍をさわるようになって日が浅い私も、当然のこと、最初は???、まったく意味不明でした。いろいろ勉強していくうちに、出版書肆がページを多く見せかけるために、(つまり商売上の理由で)、わざと落丁をつくりだして「十五より二十五」とすることがあったと知りました。後刷のときにコストを抑えるため、挿絵ページをなくした結果、ノンブルが飛ぶこともあったようです(版木を売買している間に紛失したケースもあるとか…)。そういう場合は、初刷がどういう状態なのか知っていなければ、落丁かどうか判断がつかないことにもなるので、和本の世界の奥深さを否が応でも知らされてしまいます。

ちなみに杉本梁江堂さんの落丁繰りのやり方は非常に格好良いです。じっと見てても、容易には技を盗めません…。即売会の時に奥でやっておられるときもありますので、見つけたら観察してみてください。次代に継承すべき古本屋の職人技です。


検品について

こんばんは。モズブックスです。
何やら投稿する人が限られてきましたが、いいんですかね?

今日は市場でした。市場で落札した本を持って帰ると、できるだけすぐ検品するようにしています。普通の洋装本であれば、線引きや書き込みがないかどうか。明治や大正頃の古い雑誌などでは、落丁や図版の欠けをよく調べるようにしています。今日、落札した古い古い雑誌を点検していましたら、図版(木版画)の欠けがありました。これは痛い。商品として通用するかどうか、よくよく検討しないといけません。

先ほどの象々さんの投稿では、「本を拭かない本屋もあった」ということですが、検品はきっちりやっておかないと、特にネット販売の場合は、即返品になります。当たり前ですが。神保町の超一流老舗書店では、その日仕入れてきたすべての本について、閉店後、店員さんがすべてのページをきっちりめくって検品すると聞いたことがあります。ウチは洋装本の場合、1ページ1ページをめくるのはよほど高額な本くらいしかできませんが、パラパラパラッと2~3往復すれば、微小な線引きや書き込みでも、だいたいは発見できるようになりました。というより、線引きや書き込みのある本は、なんとなく「そういう雰囲気」「そういうにおい」があるように思えます。

ちなみにウチはいままでネット販売で、線引きや書き込みや落丁などによる返品はありません。いちど「指紋が付いている」という理由で返品されたことはありますが…。


古本をきれいにするということ

こんばんは。モズブックスです。連投失礼します。

仕入れた本はできるだけ良い状態にして販売したいものです。もちろんここ10年くらいに出た本と、戦前に出た本を並べて、「できるだけ良い状態」とはどんな状態か?ということを議論したって、何の意味もありません。程度の問題、経年相応ということについて、古本屋サイド/お客様サイドの双方に共通認識があると前提した上での「できるだけ良い状態」ということです。

最近、古本買取サイトというのがよく目に付きます。だいたいどこも似通った構成で、オリジナリティーがないどころか、文章までコピペ使用してるところが多いですね(ウチもチラシからHPから、ずいぶんコピペされました、やれやれ)。そういうところをいろいろ見ていますと、なかに「高価買取のコツ」みたいなコーナーがあって、「本をきれいな状態で保管していた方が高く買い取れます」というようなことを説明しています。まあ、汚れた本よりはきれいな本の方が確かに高くなるでしょう。と、そこまではいいのですが、一歩進んだところになると「本は買い取ってもらう前にきれいにしておきましょう」と呼びかけていたりします。その方法として「カバーの汚れは食器用洗剤できれいに落ちます」など、かなり踏み込んだ内容になっています。「本を買い取ってもらう前にきれいにしておいた方が、古本屋が商品化するときにきれいにする手間が省けるから、そのぶん高く買い取れる」とまで書いているところもありました。本当なのでしょうか?

いや、これが本当かどうか、それはこの際どうでもいいのです。問題は「本をきれいにするのはお客さんなのか古本屋なのか、どっちであるべきなのか?」という点につきます。私の考えでは、お客さんにきれいにしてもらうのは筋違いです。きれいにしようと思って食器用洗剤を含ませた雑巾でごしごしカバーをこすってるときに、ビリッと破れてしまったり、PP加工していないカバーを拭いてしまって、印刷がかすれてしまったり、さまざまな不可抗力で本を傷めてしまうことが想定されます。

たとえば、空き家で何年も本棚に立てたままの本の天には埃がおどろくほど積もります。これを濡れ雑巾で一気に拭いてしまうと、埃シミが天にへばりついてとれなくなります。濡れ雑巾を使う前に、刷毛で埃を払うのが先で、こうすると埃シミは最小限で済みます。

いちいち例を挙げていくとキリがないのでやめますが、私は、古本屋は古本をきれいにしたり、補修したりすることも、日常の業務であり、スキルであると思っています。どういう汚れにはどういう薬剤を使うか、どういう道具が必要になるか、古本をきれいにするための七つ道具みたいなもの、それは古本屋ごとにいろいろ工夫されていることと思いますが、その大前提として、繰り返しになりますが、われわれ古本屋は古本をきれいにしたり、補修したりすることも、日常の業務であり、スキルだということを確認しておかねばなりません。函が壊れているのを補修する、カバーをきれいにする、小口はページを繰ったときにザラッとした埃っぽさが残らないようコザッパリ仕上げる、あと和本の綴じ直しとかもそうですね。古本をきれいにしたり、補修するのは古本屋の仕事です。

ですので、「本を買い取ってもらう前にきれいにしておいた方が、古本屋が商品化するときにきれいにする手間が省けるから、そのぶん高く買い取れる」と書いてあるのを見たときには、かなりの違和感を感じました。私なら、お客さんには、「いっさい本をきれいにしようなんて思わなくていいです、そのまま、埃をかぶったそのままの姿で拝見させてください」と言います。そして埃のかぶった本をそのまま倉庫に持ち帰り、掃除機のノズルの先にブラシを取り付けて、埃をきれいに吸い取ってしまいます。これだと刷毛で掃くのに比べて、倉庫に埃が舞わないし、本にダメージを残さず埃を取り除けます。

まあ、いろんな古本屋さんがいますから、どれが正しい正しくないとは言いにくい面もありますが、少なくとも大阪古書研究会のメンバーは、私の考えに賛成してくださるのではないかと思っています。いや、賛成どころか、いまさら当たり前のことを長ったらしく得意げに書くな、と叱られてしまうかもしれませんが…。