新年のご挨拶

モズブックスです。
新年あけましておめでとうございます。

本年より大阪古書研究会の会長を務めさせていただくことになりました。これまでと変わらぬご支援を、何卒よろしくお願い申し上げます。

さて、大阪古書研究会は平成9年9月に発足し、今年で17年目を迎えております。平成9年といえば西暦に直すと1997年です。ウインドウズ95の登場によって、インターネットに接続されたパソコンが個人に普及しはじめた矢先、東京古書組合はいち早く平成8年9月に「日本の古本屋」を立ち上げました。ヤフーオークションのサービス開始が平成11年9月、Amazon.comの日本版「Amazon.co.jp」のオープンが平成12年11月ということを考えると、古書業界の先人たちの、将来を的確に見据えた事業展開に驚かざるを得ません。

しかし、「日本の古本屋」だけが古書のネットショッピングモールであった時代は良かったのですが、ヤフーオークションやアマゾンでも古書が扱われるようになると、古書業界は急速に価格競争の波に呑まれ、大半の古書がコモディティ化してしまうことになりました。

つい先日の古書即売会の折、業界の古老に聞いた話では、21世紀に入った頃から、古書即売会での売れ行きが急速に鈍ってきたということです。ネット上での古書販売をめぐる新しい動きと、古書即売会での売上低下は、時期的に一致するだけでなく、その要因を考えても相関関係があることは明らかでしょう。

現在、大阪古書研究会は、毎年10月に「天神さんの古本まつり」(これまで16回開催)、毎年2月~3月に「水の都の古本展」(同4回開催)を主催しております。最初の頃の「天神さんの古本まつり」は、大阪天満宮の境内いっぱいにテントが立ち並び、本もよく売れたと聞いております。しかし、ここ10年ほどは、売上不振→参加店減少という負のスパイラルに抗しがたく、特にここ数年に限れば、開催するかしないかの議論が常になされるほど、古本まつりを例年通り行うこと自体が難しくなってきているような厳しい状況です。

先に申し述べた通り、即売会現場での売上不振は、「(その本が)ちょっと探せばどこでも買える」=「無理にいま買う必要はない」=「ネットで調べて最安値で買おう」という購買者心理に一因があるのは確かです。これがまさしくコモディティ化という現象なのですが、家電製品を店舗で現物を比較検討し、ネットで最安値で購入するのと同じで、私たちにとっても悩ましい問題です。珍しい本ばかりを用意することは困難ですし、古本屋としては「基本図書」と言われる商品もおさえておきたいのです。

こうした現状認識のもと、今後の古書即売会とはどうあるべきか、さらには、古書即売会はお客様に何を提供できるのか/提案できるのか、それを真摯に考えていかなければ、古書即売会の未来はないと、個人的にそう思います。木箱に商品を入れて並べておくだけでどんどん古書が売れていく時代ではありません。「一冊の本が人生を変える」といった、一昔前の啓蒙主義的なアピールだけで本が劇的に売れるとも思えません。もっと根本的なところで、私たちプロの古本屋が果たすべき役割があり、古書即売会の役割があり、それらをお客様にアピールしていく責務があるように思います。

幸いにして大阪古書研究会は、単に古書即売会を行うだけの団体ではありません。古書や古書販売にまつわる様々な研究や議論を重ね、古書文化の普及を担う一翼でありたいとの思いで活動しております。古書即売会は私たちにとって販売の場であるのはもちろんですが、そうした研究や議論の発表の場でもあるのです。

「水の都の古本展」は、上記のような問題提起をも内包し、実験的な試みとして、5年前に立ち上げたばかりの小規模即売会です。参加店は大阪古書研究会の会員店のみですので、思いついたアイデアを割と気軽に実行に移すことができます。まだまだ試行錯誤中ですが、なかなか面白みのある即売会に育ってきたという実感はあります。

今年も大阪古書研究会は、「天神さんの古本まつり」と「水の都の古本展」を2つの柱にして活動してまいります。また、これらの即売会に付随して、合同古書目録も作成いたします。合同古書目録については、また別の機会に触れることもあるかと思いますが、大阪古書研究会の重要な活動のひとつであり、日頃の研鑽の発表の場でもあります。

本年も大阪古書研究会をご支援のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。


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モズブックス の紹介

文科系古書の良書・善本を主に取り扱っています。絵葉書・古地図・摺物・古典籍など江戸末~明治・大正・戦前期の資料にも力を入れております。店舗はありませんが、インターネット、合同目録、即売会など多様な販売チャンネルを展開するとともに、お客様からの買い入れや古書市場を通じて、在庫の充実に努めています。